離婚時には婚姻時の氏を使用することにしたものの、その後婚姻前の氏に戻すことができますか。

離婚時の氏

 離婚する際に、婚姻によって氏を改めた配偶者は、婚姻前の氏にもどるか、離婚の際に称していた氏をそのまま使用するかを選ぶことができます(民法767条)。
 そして、離婚時には、いったん、婚姻時の氏をそのまま称することとした場合にも、その後さまざまな事情で、婚姻前の氏に戻したいと考える場合があります。
 このような場合、婚姻前の氏に戻すことができるでしょうか。

戸籍法107条1項

 戸籍法107条1項は、「やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。」と定めており、やむを得ない事由がある場合には、家庭裁判所の許可を得て、氏の変更ができると考えられています。
 一般的には、氏の変更に関するこの「やむを得ない事由」は、厳格に解釈されていますが、上記のように、離婚の際に称していた氏をそのまま称することとしたが、その後婚姻前の氏に戻したいという場合には、他の場合に比べて緩やかに解釈されています。
 これは、婚姻によって氏を変えた者が婚姻前の氏に戻ることが原則であり、婚姻時の氏を離婚後も使用することが例外的だと考えられているためです。

やむを得ない事由の判断

 東京高判昭和59年8月15日では、①いまだその氏が社会的に定着する前に婚姻前の氏への変更を申し立てたこと、➁申立てが恣意的ではないこと、③氏の変更により社会的弊害を生ずるおそれがないこと、という場合には、「やむを得ない事由」の存否を判断するに当り、その基準を一般の場合よりもある程度緩和することは許されると述べています。
 ①については、離婚後の婚姻時の氏の使用期間の長さが問題となりますが、相当長期の場合でも、氏の変更は認められると考えられています。
 ➁や③については、婚姻前の氏に変更する必要があるか否かということですが、例えば、普段の生活上、すでに婚姻前の氏を用いており、それが相当定着している、といった場合には、氏の変更は認められやすいと言えます。
 以上からすると、やむを得ない事由の判断は、離婚の際に称していた氏をそのまま称することとしたが、その後婚姻前の氏に戻したいという場合には、きわめて緩やかに解されており、離婚から相当年数が経過していても、婚姻前の氏に戻す必要がそれなりにあるという場合には、やむを得ない事由があるとして、氏の変更が認められているということができます。

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