離婚Q&AQUESTION
離婚Q&AQUESTION
通常の契約の場合、詐欺されたとか強迫されたといった特別の事情がない限り、その契約を取消すことはできないのが原則です。
しかしながら、夫婦間で行われた契約に関しては、その契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取消すことができます(民法754条)。
この取消す権利を、夫婦間の契約取消権といいます。
このような夫婦間の契約取消権が特別に設けられたのは、夫婦間の問題に関して、裁判所の力を借りて解決することは望ましくないからである、などといわれています。
それでは、夫婦間の契約取消権は、夫婦が離婚するまで妥当するのでしょうか。
特に、夫婦がすでに破綻しているような場合においても、取消をすることができるのでしょうか。
たとえば、夫婦間の婚姻関係破綻後に、夫が妻に対して、離婚を前提に財産の一部を贈与したが、その後、離婚をする前に、夫が贈与を取消す旨の意思表示を行ったというような場合です。
この点に関し、最判昭和33年3月6日は、「夫婦関係が、破綻に瀕しているような場合になされた夫婦間の贈与はこれを取消しえない」と判断しています。
したがって、婚姻関係破綻後には、夫婦間の契約取消権は行使できないということができます。
それでは、契約締結時点ではまだ破綻に至っていなかったけれども、その後破綻した場合、契約を取消すことはできるのでしょうか。
たとえば、夫婦が破綻前に、夫が妻に対して、財産の一部を贈与したが、その後婚姻関係が破綻したため、夫が贈与を取消す旨の意思表示を行ったというような場合です。
この点に関し、最判昭和42年2月2日は、「民法754条にいう「婚姻中」とは単に形式的に婚姻が継続していることではなく、形式的にも、実質的にもそれが継続していることをいうものと解すべきである」とし、婚姻が破綻している場合には、夫婦間の契約は取消すことができないと判断しました。
したがって、契約自体は婚姻関係破綻前であっても、その後、婚姻関係が破綻した場合には、夫婦間の契約取消権は行使できないということができます。
上記の事例は、婚姻関係破綻後の取消権が問題となった事例ですが、いずれも取消そうとする側に問題がある事例でした。
一方、夫が妻に財産を贈与したものの、妻の不貞行為により婚姻関係が破綻したといったケースでは、婚姻関係が破綻後であっても、夫に契約取消権を認めたほうが良いとも考えられます。
この点に関し、判例はまだありませんが、婚姻関係破綻後はどのような場合でも、契約取消権の行使は認められないというものでもないように思われます。