親権の行使が不適当な場合、親権を制限することができますか。

親権の行使が不適当な場合

 親権者が、子どもに対して暴力をふるったり、子どもの金銭を勝手に使ってしまっているなど親権の行使が不適当である場合、親権喪失・親権停止・管理権喪失といった手段をとることが考えられます。
 以下では、それぞれについてみていきます。

親権喪失

 父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、子ども、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官は、家庭裁判所に対して、その父または母について親権喪失の審判申立をすることができます(民法834条)。

親権停止

 父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、子ども、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官は、家庭裁判所に対して、その父又は母について親権停止の審判申立をすることができます(民法834条の2第1項)。
 家庭裁判所が親権の停止を行う際には、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、2年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定めます(民法834条の2第2項)。
 親権喪失と親権停止は、親権喪失が永久に親権を失わせるものであるのに対し、親権停止は一時的に親権を失わせるものという点で違いがあります。それゆえ、親権停止の方が、要件が緩やかになっています。

管理権喪失

 父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、子ども、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官は、家庭裁判所に対して、その父又は母について管理権喪失の審判申立をすることができます(民法835条)。

親権制限の取消

 親権制限の原因が消滅したときは、本人又はその親族は、家庭裁判所に対して、それぞれ親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判の取消を申し立てることができます(民法836条)。

親権制限の効果

 共同親権者の一方について、親権喪失や親権停止がなされた場合、もう一方の親権者の単独親権となります。
 また、親権喪失や親権停止によって、親権者がいなくなった場合には、未成年後見が開始します(民法838条1号)。
 ただし、未成年後見人は、別途選任の手続が必要となります。
 なお、親権制限がなされても、親子としての法律関係がなくなるわけではないため、子の扶養義務は消滅せず、相続権も残ります。

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