どのような場合に離婚は無効となりますか。

通常の協議離婚

協議離婚をする場合、夫婦が離婚届に署名押印をし、市町村長の戸籍係に届出をします(民法764条)。
戸籍係では、離婚届が当事者双方及び成年の証人2名以上が署名した書面であること(民法739条2項)、未成年の子がいる場合には親権者の定めがあること(民法819条)、その他の法令に違反しないこと(民法765条)、が確認されます。
また、届け出をしたのが本人かどうかの確認を行い、本人でない場合には、届け出を受理したうえで、本人に届け出を受理した旨を通知します(戸籍法27条の2)。
上記の手続により、離婚届が戸籍係に受理されれば、通常は離婚が認められます。
なお、離婚手続が極めて簡便なものであることは、日本特有のものと言われており、海外では一定期間の別居が離婚の要件となっていたり、裁判官の前での意思確認が必要とされている例もあります。

協議離婚が無効の場合

協議離婚の要件は、①離婚の意思(実質的要件)と➁離婚の届出(形式的要件)であり、これらのうちいずれかが欠けている場合には、離婚は無効となります。
ただ、➁離婚の届出に関しては、不備がある場合でも、受理されてしまえば離婚そのものの効力に影響を及ぼさないため(民法765条2項)、協議離婚の無効として後日問題になるのは、通常、①離婚の意思が欠けているという場合です。

離婚届の偽造の場合

たとえば、夫婦仲が悪くなったが、妻が離婚に応じないという場合、夫が妻に無断で離婚届を記載して戸籍係に提出してしまうということがありえます。
このような場合、妻には離婚の意思がないため、離婚は無効となります。

仮装離婚の場合

離婚意思があるかどうかが争われるケースがありえますが、以下のような場合がありえます。
①妻を戸主とする婚姻関係にある夫婦が夫に戸主の地位を与えるために、離婚届を提出し、その後夫を戸主として婚姻届を提出した場合
➁収入を失った夫が生活保護の需給を継続するために、収入のある妻との離婚届を提出した場合
判例では、離婚意思に関して、「法律上の婚姻関係を解消する意思の合致」があれば離婚は有効と判断しています(最判昭和38年11月28日)。
そして、上記①、➁のいずれの場合についても、離婚の成立を認めています。

無効な離婚の追認

夫が勝手に離婚届を提出していたなどの離婚の無効事由がある場合でも、後に妻が離婚を追認すれば、離婚は届出時にさかのぼって有効になると考えられています。

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