どのような場合に子の監護者指定がなされるのですか。

婚姻中は、父母の共同親権

 父母が婚姻している間は、子の親権は父母が共同してもちます。
 親権には、身上監護権と財産管理権があり、身上監護権とは、子を監護及び教育する権利義務です。
 ですから、親権の中には、子の監護権は当然含まれているのです。

子連れ別居の場合

 父母のいずれかが、他方の承諾を得ずに、子を連れて別居することは少なくありません。
 実際の事案では、母が父の承諾を得ずに、子を連れて別居することが多いので、ここでは、その場合を例として説明します。
 その場合に、母が家庭裁判所に子の監護者指定の審判申立をすることがあります。これは、父でなく母である自分を、子の監護者に指定する審判を求めるものです。

どのような場合に、子の監護者指定の審判ができるのか。

 父母の婚姻中は、父母が子の共同親権者であり、父母が別居しているとはいえ離婚していない場合には、父母は子の監護権を含む親権を有してるのです。それにも拘わらず、父母の一方を子の監護者に指定し、他方の監護権を奪うことは、どのような場合にできるのでしょうか。
 審判例では、父母が事実上離婚状態にある場合に限り監護者の指定をなしうるとの説と、夫婦が事実上離婚状態にあると否とを問わず、監護者の指定をなしうるとの説があります。
 実務では、子の監護について父母間に争いがある場合には、あまり理論には言及しないで、子の監護者指定の審判をするものが多いのです。

高松高裁平成4年8月7日決定

 しかし、判例の中には、子の監護者指定を否定するものもあります。
 高松高裁平成4年8月7日決定は、
 「監護権は親権の一内容であって、離婚後において親権者でない方の親に監護権を認める場合を除いては、親権から独立して存在するものではないから、親権者である相手方に監護権を認める趣旨の審判は法律上意味がないばかりでなく、これにより他方の親権者である抗告人(父)の親権から監護権を剝奪する効果を生ずるものでもない。このような申立ては「親権は、父母の婚姻中は父母が共同して行う」との民法818条の趣旨に反するものであって許されず」と述べて、母による子の監護者指定の申立てを却下しています。

子の監護者指定の事実上の効果

 子の監護者指定審判にどのような法的効力があるかについては、必ずしも明らかにはなっていません。
 しかし、子の監護指定審判によって、母の単独監護の事実を追認させ、子の監護の継続性等から、離婚時に母が親権者の指定を受けられるようにするとの事実上の効果はあります。
 ですから、逆に、父の側は、別居中の子の監護者指定をする必要がないことを主張していくことが重要になります。

親権・監護権のその他の記事