弁護士
本橋 美智子

何年別居したら離婚が認められるか

協議離婚に制約はない

 日本では協議離婚制度が認められています。
 これは、裁判所などが関与することなく、当事者の合意だけで離婚が成立する離婚の方法です。具体的には、夫と妻が離婚届の用紙に必要事項を記載して署名捺印し、更に証人2名が署名捺印して、これを市区町村役場に提出すれば、離婚は成立します。
 日本の離婚の約90%は協議離婚です。
 このように非常に簡単な離婚制度がある国は、かなり稀なのです。

一方の配偶者が離婚を承諾しない場合

 しかし、一方の配偶者が離婚を承諾しない場合には、協議離婚はできませんし、調停離婚も成立しません。
 調停は、あくまで家庭裁判所における話し合いなので、調停でも、一方の配偶者が離婚を拒否すれば、調停離婚は成立しないのです。
 そして、この場合には、離婚の裁判をすることになります。

裁判離婚には、民法が定める離婚原因が必要

 離婚裁判では、原告の請求が認められれば、被告配偶者の意思に反して、裁判所が離婚の判決を下して、離婚することができるのです。
 ですから、離婚裁判で離婚が認められるためには、民法が定める離婚原因が必要なのです。
 民法770条1項は、5つの離婚原因を定めていますのが、このなかで最も多く(ほとんど100%といってもいいのですが)主張されるのが、5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」です。

別居期間が最も重要

 では、裁判所は、どのような場合この「婚姻を継続し難い重大な事由」があると認めるのでしょうか。
 被告配偶者に暴力、不貞行為などの有責行為がある場合には、別居期間が短くても、離婚が認められるでしょう。
 しかし、人生観、結婚観の違い、子供の教育方針の違い、金銭感覚の違い、性格の不一致などの客観的にはいずれの配偶者の有責行為ともいえない原因で、夫婦関係が悪化した場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無は、主に別居期間によって判断されます。

3年から5年の別居期間が基準

 そして、これまでの判例や学説からみると、3年から5年の別居期間があれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」があると判断されることが多いといえます。
 この別居期間は、別居開始から裁判の口頭弁論終結時までの期間ですので、調停期間や裁判期間も含まれます。

原告が有責配偶者の場合

 なお、原告配偶者が他の女性と不貞行為をしたために婚姻が破綻したような場合(このような原告を有責配偶者といいます。)には、3年から5年の別居期間では足りず、これよりは長期の別居期間が必要とされる場合が多いのです。
 この場合にも、別居期間は、婚姻同居期間、夫婦の年齢、子供の有無、年齢等によっても異なるので、一概に述べることはできないのですが、判例では、6年から10年程度の別居期間を必要としているものが多いといえます。

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