弁護士
本橋 美智子

父母の離婚後の子の共同親権について

法務省の外国法制調査

 令和2年4月に、法務省民事局が「父母の離婚後の子の養育に関する海外法制について」と題する調査結果を発表しました。
 平成23年に民法766条の子の離婚後の監護に関する規定等が改正された際に、離婚後の親権制度の在り方や、離婚後の面会交流の継続的な履行を確保するための方策等について検討すべきとの附帯決議がされ、その後、離婚後の子の親権、面会交流、養育費の支払い等について、議論がされてきました。
 特に、日本は、離婚をするときは父母の一方を親権者と定めなければならないとする、離婚後の単独親権制度をとっています。
 この離婚後の単独親権制度をとっている国が少ないことは、以前から指摘されており、離婚後の父母の共同親権を求める意見も強くなってきていました。
 このような社会事情を背景にして、法務省が海外24か国の法制度を調査したのです。

離婚後の単独親権の国は、インドとトルコだけ

 その結果、離婚後単独親権のみが認められているのは、インドとトルコのみです。
 その他の多くの国では単独親権だけでなく共同親権も認められています。
 共同親権の認め方ですが、①裁判所の判断等がない限り原則として共同親権とする国は、イタリア、オーストラリア、ドイツ、フィリピン、フランス等 ②父母の協議により単独親権とすることもできるとする国は、カナダブリティッシュコロンビア州、スペイン等となっています。

今後の日本の在り方

 このように、日本の離婚後の単独親権制度は、世界の趨勢から見ると稀であることは間違いないでしょう。
 しかし、日本では、離婚後の共同親権制度をすぐに導入することには、強い反対論があります。特に、夫のDV等によって離婚した妻の場合には、到底離婚後の共同親権を認められないでしょう。
 勿論、離婚後の共同親権制度を導入するとしても、子の利益の観点から裁判所が共同親権を認めるにふさわしいかどうかを判断することになるでしょう。
 このような民法改正はすぐには実現できないとしても、現行法上、親権と監護権を父母で分けることは可能ですので、別居後も父と母が子の養育については信頼関係を維持し、離婚後に親権と監護権を父母で分けることも考えられると思います。

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