弁護士
本橋 美智子

別産制型夫婦財産契約のすすめ

夫婦財産契約とは

 夫婦財産契約とはいうのは、馴染みがないかもしれませんが、民法で定められている契約です。
 民法756条は、「夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。」と定めています。
 このように、民法の規定では、夫婦の財産については、まず夫婦財産契約を締結することが原則で、これがない場合に、法定財産制が適用されることになっているのです。

夫婦財産契約はあまり利用されていなかった

 しかし、これまで夫婦財産契約はあまり利用されていませんでした。
 その理由としては、日本では婚姻前に財産について契約をする習慣がないこと、婚姻前に契約をして、第三者等に対抗するには登記までしなければならないことから手続が煩雑であること、婚姻後の変更ができないことや、契約内容や契約の効力等に関する定めがないことが障害になっていること等が挙げられています。

多様化した夫婦には夫婦財産契約がふさわしい

 しかし、現代の多様化した夫婦には、法定財産制ではなく、自分達に合った夫婦財産制を選択することがふさわしくなってきています。
 共働き夫婦の場合には、夫婦の収入はそれぞれその稼得者のものとし、生活費等の共通経費は当事者が合意した割合等で負担し、残りは各人のものとする別産制がふさわしい場合が少なくないと思います。

離婚時の財産分与の対象としない合意

 現在の裁判実務では、離婚時には、夫婦が婚姻中に得た財産(相続、贈与により取得した財産は除く)は、夫名義であれ妻名義であれ、財産分与の対象となり、原則として50%ずつ分けることになっています。
 このような離婚時の財産分与制度に、抵抗感を持つ夫または妻も少なくありません。
 自分が努力して得た財産の2分の1を妻に分与することに納得しない夫もありますし、家事育児の大部分を負担しながら働いて得た妻の財産を夫にとられることに抵抗がある妻もいます。
 このような場合には、夫婦財産契約で、婚姻中に得た財産は稼得者のものとし、離婚時の財産分与の対象財産とはしない旨を合意しておくことが考えられるのです。

夫婦財産契約は、夫婦の間では登記をしなくても効力がある

 夫婦財産契約は、夫婦の相続人や第三者に対抗するには、登記をしなければ効力がありませんが、夫婦の間では、登記がなくても効力があります。
 ですから、既成の法定財産制になじめない人は、思い切って婚姻前に夫婦財産契約を締結することを検討してみるのも良いと思います。
 婚姻前に夫婦の家計や財産のことを話し合うことによって、各自の家庭観、夫婦観を確かめることにもなると思います。