弁護士
本橋 美智子

外国の離婚判決で父母の共同親権に服した子の親権者変更

海外では離婚後の父母共同親権が主流

 日本では、離婚する場合に、子の親権者を父母のいずれか一方に決めなければなりません。離婚後も父母が子の共同親権者となることはできないのです。
 しかし、海外では、このような離婚後単独親権制度をとる国はわずかになっています。
 令和2年4月の法務省民事局の「父母の離婚後の子の養育に関する海外法制調査」では、調査した海外24か国のうち、単独親権のみが認められているのは、インドとトルコのみで、その他の国では、単独親権だけでなく共同親権も認められているとのことです。
 そうすると、たとえ日本人の離婚であっても、海外で離婚判決を得た場合には、その子は離婚後も父母の共同親権に服する可能性があるのです。

父母の共同親権を単独親権に変更する方法

 民法819条6項は、「子の利益のために必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。」と定めています。
 これは、離婚の際の協議、調停、審判、判決で父または母が子の親権者と指定された後に、事情変更が生じた場合に、親権者を他の親に変更することができることを定めたものです。
 親権者変更は、父母の協議だけではできず、必ず家庭裁判所の手続を経る必要があります。

共同親権に服している子については親権者変更ができない

 民法819条が単独親権行使者を規定していることや、819条6項の規定が「親権者を他の一方に変更することができる。」と定めている文言等から、通説・判例は、この親権者変更は、子が単独親権に服している場合に限って許されると解していました。
 ですから、離婚によって子の単独親権者となった父または母が再婚し、父または母の配偶者が子と養子縁組をした場合には、子は実親と養親の共同親権に服しているので、親権者でない他方の実親が親権者変更の申立てをすることはできないのです。

外国の離婚判決で父母の共同親権に服した子の親権者変更

 ところが、子が父母の共同親権に服している場合にも、子の親権者変更を認める判例が出たのです。
 東京家庭裁判所令和元年12月6日の審判は、次のような事案でした。
 夫と妻は平成16年に婚姻し、長女と二女をもうけました。
 夫と妻は平成25年1月に、子らの親権を共同親権として離婚手続を開始することを合意し、同年2月にEF地方裁判所(公刊物からはどこの国かは不明です)において離婚の裁判が登録され、離婚が成立しました。  
 子の母は、平成25年3月には子らを連れて日本に帰国し、以後日本で子らを監護しています。父は、その後音信不通となり、養育費の支払いもしていません。
 母は、平成31年から交際相手と同居し結婚を予定しており、その交際相手と子らが養子縁組をすることを希望していますが、子らの親権が共同親権となっていることから、養子縁組をするため、子らの親権者を母に指定するとの審判の申立てをしました。
 東京家庭裁判所は、子らの共同親権を内容とするEにおける離婚は、日本においても効力を有することを認めたうえで、「外国において子の親権を父母の共同親権とする定めが我が国において有効とされる場合において、国際裁判管轄を有する日本の裁判所は、日本法が準拠法とされるときは、民法819条6項に基づき、父母の共同親権から父母の一方の単独親権とすることができると解される。」と述べて、子の親権を父母の共同親権から母の単独親権に変更したのです。
 この事案では、父が音信不通で何ら子の監護をしていないので、結論は、適切であったと思われます。
 しかし、子の父が離婚後も子の監護を行っている等の場合には、どのような事情がある場合に、外国判決による共同親権を単独親権に変更することができるかは大きな問題になると思います。

注目度の高い記事