弁護士
本橋 美智子

10万円給付金は、個人単位で

総務省の支給方法

 令和2年4月20日に、「新型コロナウィルス感染症緊急経済対策」が閣議決定され、10万円給付金(仮称は特別定額給付金)が支給されることになりました。
 この10万円給付金施策の目的は、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うこととされています。
 そして、この10万円給付金の給付対象者は、基準日(令和2年4月27日)において、住民基本台帳に記録されている者で、受給権者は、その者の属する世帯の世帯主になっています。
 また、配偶者からの暴力で避難している者については、現実に居住する市区町村で支給を受けることができる取り扱いが定められています。

なぜ世帯主が受給権者なのか

 10万円給付金の受給権者を世帯主と決めた理由はわかりませんが、たぶんその方が支給の手数、費用がかからないという判断でしょう。
 しかし、これは、適切ではないと思います。
 当然ですが、所得税、住民税は、個人単位で課税されています。
 共働き世帯では、夫も妻も給与から源泉徴収がされ、それぞれの口座に給与は振り込まれるのです。
 また、家計費の負担方法は夫婦によっていろいろですが、夫だけが家計費を負担している夫婦は、少なくなっているでしょう。
 このような現代にあって、世帯主に世帯員全員の給付金を支給する方法は、市民感覚にも合致しないと思います。

そもそも世帯主概念が問題

 世帯主とは、主として世帯の生計を維持する者と解されていますが、夫婦世帯の場合には、現在でも夫が世帯主になっている世帯がほとんどでしょう。
 しかし、特に共働き世帯の場合には、夫と妻の二人で生計を維持しているのであって、そのいずれかを主な生計維持者と認定するのは難しい場合も多いと思います。
 また、そもそも成人の二人のうち一方のみが稼ぎ手であることを前提とした制度は、女性の自立を阻害するものといえるでしょう。

マイナンバーの利用

 マイナンバー法が成立し、平成27年10月以降住民基本台帳法に記載されている個人には、個人番号が通知されています。
 当然のことですが、このマイナンバーは個人単位で付けられているのです。
 ですから、10万円給付金もこのマイナンバーを指標として、各個人に支給することはそう難しくないと思います。
 マイナンバー法は、国民の利便性の向上をも目的としています。
 10万円給付金の迅速な支給に資することは、正にマイナンバー法の目的に合致するものです。
 このように、10万円給付金の受給権者は、世帯主ではなく、住民基本台帳法に記録されている各個人とすべきだと思います。

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